2025年6月10日

台風による強風下での避難はしご使用法〜安全に降りるための5つのコツ〜

台風のニュースが流れるたび、「万が一のとき、うちの避難はしごは本当に使えるんだろうか?」と不安に思ったことはありませんか?

特に、ビュービューと音を立てるほどの強い風が吹いている中では、なおさらですよね。

私たち特殊梯子製作所は、普段は目立たないけれど皆さんの安全を支える「縁の下の力持ち」として、日々、梯子の研究開発に取り組んでいます。

この記事では、そんな梯子のプロの視点から、台風のような強風下で避難はしごを使わざるを得ない状況になったとき、どうすれば安全に降りられるのか、そのための「5つのコツ」を、理由とあわせて分かりやすく解説していきます。

いざという時のために、正しい知識を一緒に確認していきましょう。

なぜ台風時の避難はしご使用は危険なのか?〜プロが解説する3つの理由〜

まず、なぜ台風の時に避難はしごを使うのがこれほど危険なのか、その理由からご説明します。
「大丈夫だろう」という思い込みが、一番の落とし穴になるかもしれませんね。

理由1:風で梯子があおられる「風圧荷重」の問題

「風圧荷重(ふうあつかじゅう)」という言葉を少しだけ使いますが、難しくありません。
つまり、「梯子が風を受けることで、どれくらいの力がかかるか」ということです。

皆さんも、風の強い日に大きな板や傘を持っていると、体ごと持っていかれそうになった経験があるのではないでしょうか。
あれと同じ現象が、避難はしごでも起こるわけです。

特に板状のステップや幅の広い梯子は風の影響を受けやすく、体が振られて非常に危険です。
風の力は風速の2乗に比例すると言われており、風速が2倍になると、体や梯子が受ける力はなんと4倍にもなります。
少し風が強くなっただけと感じても、梯子にかかる力は想像以上に増している、というわけなんです。

風の強さ(気象庁の目安)平均風速(m/s)人への影響
やや強い風10~15風に向かって歩きにくい。傘がさせない。
強い風15~20風に向かって歩けない。転倒する人も出る。
非常に強い風20~30何かにつかまらないと立っていられない。
猛烈な風30~立っていることは困難。屋外での行動は極めて危険。
風速と避難はしご使用時の危険度

理由2:雨で滑りやすくなる足元と手すり

金属製の梯子は、雨に濡れると驚くほど滑りやすくなります。
これは、金属の表面に水の膜ができて、靴底との摩擦が極端に小さくなるからなんですよ。

特に、パニックに近い状況では足元への注意が散漫になりがちです。
革靴やヒールで降りるのは論外ですが、底がツルツルにすり減ったスニーカーや、脱げやすいスリッパなどもってのほかです。

いざという時に備えるなら、滑りにくい靴を準備しておくことも大切だと言えるんです。

理由3:飛来物による衝突リスク

台風の本当の怖さは、風そのものだけではありません。
風によって飛ばされた物が、思わぬ凶器になることです。

風速が20m/sを超えると、屋根瓦や看板、木の枝などが飛散し始めます。
もし避難している最中に、こうした飛来物が体に当たってしまったらどうなるでしょうか。

その衝撃でバランスを崩し、梯子から転落してしまう…そんな二次災害につながりかねません。
台風の際は、屋外に出ること自体にこうしたリスクが伴うことを、まず念頭に置いておく必要があります。

強風下でも安全に降りるための5つのコツ

危険性を理解した上で、それでも「どうしても降りなければならない」という状況に備えるための、具体的な5つのコツをご紹介します。
一つひとつは基本的なことですが、知っているのと知らないのとでは大違いです。

コツ1:降りる前に必ず「風の強さ」と「周囲の状況」を確認する

窓やベランダから外を眺めるだけでなく、可能であれば少しだけ体を外に出し、風の強さを肌で感じてみてください。

先ほどの表にもあったように、風速15m/sを超えると、何かにつかまらないと立っているのが難しくなります。
もし、体を支えるのがやっと、というほどの風であれば、はしごを降りるのは極めて危険です。
無理をしない判断が最も重要です。

また、はしごを降ろす際には、

  • 下に障害物はないか?
  • 下に人がいないか?
  • 電線などに引っかかる恐れはないか?

これらを必ず声に出して確認する習慣をつけましょう。

コツ2:服装は「動きやすさ」と「滑りにくさ」を最優先に

避難時の服装は、生死を分ける重要な要素です。
以下のポイントを参考にしてください。

荷物は持たない

リュックサックでさえ、風を受ける面積が広がり、体のバランスを崩す原因になります。荷物は最小限にし、ポケットに入る程度にしましょう。

フード付きの服は避ける

フードが風をはらんでしまい、パラシュートのように後ろに引っ張られ、非常に危険です。

体にフィットする服を選ぶ

ダボダボの服も風の影響を受けやすいです。動きやすい範囲で、体にフィットした長袖・長ズボンが基本です。

滑りにくい靴を履く

靴底がゴム製で、溝がしっかりとあり、足にフィットするスニーカーが最適です。

軍手があれば万全

雨で濡れた梯子を掴む際、軍手があれば握力を補助し、滑り止めにもなります。手の保護にも役立ちます。

コツ3:基本動作「3点支持」を絶対に崩さない

これが、梯子を安全に降りる上で最も重要なポイントです。
「3点支持(さんてんしじ)」とは、両手・両足の4点のうち、常に3点で体を支え続けることです。

つまり、「手か足のどれか1つしか動かさない」という絶対的なルールです。

焦っていると、右手と右足を同時に動かすなど、2つの部位を同時に動かしてしまいがちです。
これがバランスを崩す最大の原因であり、転落事故に直結します。

「右手、左足、右足、左手…」と心の中で唱えながら、ゆっくりでも確実なこの動作を徹底してください。

コツ4:体の重心を「梯子に近づける」意識を持つ

体が梯子から離れれば離れるほど、風にあおられた際の振れ幅が大きくなってしまいます。
これは、てこの原理をイメージすると分かりやすいかもしれませんね。

そこでポイントになるのが、体の重心をできるだけ梯子に近づけることです。
おへそを梯子のステップ(段)にくっつけるようなイメージで、体を梯子に密着させてみてください。

たったこれだけの意識で、風に対する安定性が格段に増すんです。
怖がって腰が引けてしまうと、かえって危険な状態になるというわけです。

コツ5:降りることに集中し、下を見すぎない

地上まであとどれくらいか、気になってつい真下を見てしまいたくなる気持ちはよく分かります。
しかし、真下を見ると恐怖心が増し、体の動きが硬直してしまうことがあります。

視線は、次に手や足を置こうとしているステップの、少しだけ先に向けるのがコツです。
こうすることで、恐怖心を和らげながら、次の一歩を確実に踏み出すことができます。

パニックにならず、自分の呼吸を意識しながら、一段、また一段と、降りることだけに集中しましょう。

【開発者コラム】安全性を追求した避難はしご「QQラダー」の工夫

少し手前味噌になってしまいますが、私たち特殊梯子製作所が開発した避難はしご「QQラダー」について少しだけお話しさせてください。

QQラダーの詳細はこちら

この記事で解説したような強風時の危険性を少しでも減らすため、私たち開発者は様々な工夫を凝らしています。
例えば、はしごの横揺れやねじれを防ぐために「突子(とっし)」という、壁に突っ張るための部材を取り付けています。
これが壁にしっかりと当たることで、風にあおられても梯子が安定しやすくなるんです。

突子(とっし)

もちろん、国の定めた厳しい安全基準である国家検定にも合格しています。
こうした「いざという時に本当に使えるか」という現場の視点を大切にすることが、私たちのものづくりの原点なんです。

よくある質問(FAQ)

Q1: 記事では風速15m/s以上は危険とありますが、実際に風速を測定する手段がない場合、どのような目安で判断すればよいでしょうか?

A: 身の回りの現象で判断できます。木の枝が大きく揺れ、歩行時に体が押される感覚があれば風速10-15m/s程度、立っているのに支えが必要と感じたら15m/s以上です。気象庁の「強風注意報」(10m/s以上)や「暴風警報」(20m/s以上)も参考にし、少しでも危険を感じたら使用を控えてください。

Q2: 避難はしごが使用できないと判断した場合、他にどのような避難方法がありますか?

A: まず建物内の最も安全な場所(窓から離れた内側の部屋、1階など)への移動を検討してください。台風の場合、多くのケースで屋内退避の方が安全です。火災発生時や建物倒壊の危険がある場合は、風が弱まるタイミングを待つか、119番通報で専門的な救助を要請することが最も安全です。

Q3: 高齢者や小さな子供がいる家庭では、どのような特別な配慮が必要でしょうか?

A: 高齢者は事前に医師と相談して使用可能性を確認し、小さな子供(小学校低学年以下)がいる場合は基本的に救助を待つことを推奨します。これらの家庭では、避難経路の複数確保、近隣住民との連携体制構築、緊急時の連絡手段確保が特に重要です。地域の防災担当者や消防署に事前相談し、個別の避難計画を策定してください。

Q4: 避難はしごの定期点検はどの程度の頻度で行うべきでしょうか?

A: 年2回(台風シーズン前の5月と11月)の実施を推奨します。重点点検項目は、

①固定金具の緩みやサビ
②ステップのひび割れや変形
③ロープや鎖の摩耗
④収納ボックスの開閉動作
⑤設置場所周辺の環境変化

です。
実際に設置してみる動作確認も重要で、異常を発見した場合は台風シーズン前に必ず修理・交換を完了させてください。

Q5: 「3点支持」以外に、強風下での安全性を高める降下技術や心理的なコツがあれば教えてください。

A: 技術面では、

①ステップ1段ずつ確実に降りる「小刻み降下法」
②風の直撃を避ける体の向き調整
③3-4段ごとの一時停止

が有効です。
心理面では、

①4秒吸って4秒止めて4秒吐く深呼吸
②「右手、左足」など動作の声出し確認
③「まず5段降りる」

など小さな目標設定が効果的です。
高所恐怖症の方は事前に低い脚立で練習し、「下を見ずに次のステップだけを見る」習慣を身につけてください。

まとめ

今回は、台風の強風下で避難はしごを安全に使うための5つのコツについて解説しました。

一番大切なのは、言うまでもなく「無理をしない」という冷静な判断です。
しかし、いざという時に正しい知識を持っているかどうかで、その判断の質や行動の安全性が大きく変わってきます。

この記事が、皆さんの防災意識を高める一助となれば幸いです。

次のステップとして、ぜひご自宅や職場の避難はしごが「どこにあり、どんな種類なのか」を確認してみてください。
そして、ハッチの周りに物が置かれていないかチェックする。
それだけでも、立派な防災活動の第一歩です。

私たち専門メーカーも、皆さんの安全を守るため、これからも技術開発に励んでまいります。

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このコラムの監修者

寺本 隆

寺本 隆( 業界歴:40年 )

長年、建築や造園業の現場で特殊なはしごを開発し続けてきた当社は、「どんな要望にも応えたい」という強い信念のもと、持ち運びやすく緊急時に展開できる伸縮はしごを実現しました。例えば鉄道での迅速な避難に貢献し、多くの官公庁や大手企業で採用されています。お客様からの多様な要望に応え、業界で類を見ない製品を生み出してきた私たちは、“考えることをやめなければ不可能はない”と信じ、今後も唯一無二のはしごを創り続けることを使命としています。

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