2026年1月20日

高齢者のはしご使用、加齢に伴う身体能力の変化と安全対策

「庭の木の枝が少し伸びてきたな…」「高いところの電球を取り替えたいな」
暮らしの中のこんな場面で、若い頃と同じ感覚ではしごや脚立を使っていませんか?

実は、はしごや脚立からの転落事故は60代以上で急増し、大きな怪我につながりやすいという見過ごせないデータがあるんです。
これは単なる不注意だけでなく、ご自身では気づきにくい「加齢による身体の変化」が大きく関係しています。

この記事では、はしごづくりのプロである私が、なぜ高齢者のはしご使用に危険が伴うのか、そして、どうすれば安全に使い続けられるのか、その具体的な対策を分かりやすく解説します。
大切なご自身の、そしてご家族の安全のために、ぜひ最後までお付き合いください。

【この記事の結論】高齢者のはしご・脚立作業 事故を防ぐ3つの鉄則

  • 道具選び
    安定性を最優先。「手すり付き」や「ステップの幅が広い」製品を選び、軽くて扱いやすいものを選ぶ。
  • 使用前の確認
    作業前に「硬く平らな地面」に設置し、本体にぐらつきや破損がないか必ず点検する。滑りにくい靴を履くことも重要。
  • 使用中のルール
    脚立の「天板には絶対に乗らない」。また、目標に手が届かなくても「体を乗り出さない」ことを徹底する。
高齢者のはしご使用 安全対策ガイド

なぜ危ない?データで見る高齢者のはしご・脚立事故の実態

まずは、どのくらい事故が起きているのか、客観的なデータを見ていきましょう。
「自分は慣れているから大丈夫」と思っている方ほど、知っていただきたい現実です。

「自分は大丈夫」が一番危険!60代以上で事故が急増

製品評価技術基盤機構(NITE)の調査によると、2017年度から2021年度までの5年間に発生したはしご・脚立の事故162件のうち、被害者の約4割は60歳以上でした。
さらに深刻なのは、高齢者の場合、転落事故が重症化しやすいという点です。

消費者庁の分析でも、高齢者の転倒・転落事故は年代が上がるにつれて救急搬送される人が増え、入院が必要となる「中等症」以上の割合も高くなる傾向が見られます。
若い頃ならなんともなかった高さからの転落が、骨折や頭部の強打といった、その後の生活に大きな影響を及ぼす大怪我につながりかねません。

事故の多くは「住宅の庭」で発生している

事故はどこか特別な場所で起きているわけではありません。
消費者庁の調査では、事故の大半が「庭木の剪定」や「屋根の修理」といった、ごくありふれた住宅周りの作業中に発生しています。
「ちょっとだけだから」と油断しがちな身近な作業にこそ、危険が潜んでいることを知っておく必要があります。

事故原因の半数は「誤使用」と「不注意」

NITEの報告によれば、事故原因の半数近くが「使用者の不適切な取り扱いや不注意」によるものです。
製品そのものの欠陥よりも、私たちの使い方に問題があるケースが多いです。
しかし、これは裏を返せば、「正しい知識を身につけ、正しく使う」ことで、事故の多くは防げるということでもあります。
これから、そのための具体的なポイントを詳しく解説していきます。

【プロが解説】事故につながる3つの身体能力の変化とは

「若い頃は平気だったのに、なぜだろう?」
その疑問の答えは、加齢に伴う身体能力の変化にあります。
ご自身では気づきにくい3つのポイントを、はしごのプロの視点から解説します。

ポイント1:バランス能力の低下(平衡感覚の変化)

私たちは立っている時、無意識に体の揺れを補正してバランスを保っています。
この能力は、目からの情報(視覚)、耳の奥にある三半規管などからの情報(前庭感覚)、足の裏や筋肉からの情報(体性感覚)を脳が統合することで成り立っています。

しかし、加齢とともにこれらの感覚器官の機能は少しずつ低下していきます。
特に、頭の傾きや動きを感知する前庭機能が衰えると、ふらつきやすくなります。
若い頃はひょいと渡れた一本橋が、今は怖く感じるのに似ています。

平らな地面なら問題なくても、はしごや脚立の上のような不安定で足場の狭い場所では、わずかな体の揺れが命取りになります。
体勢を立て直す反応が遅れ、そのまま転落につながってしまうわけです。

ポイント2:筋力の低下(とっさの一歩が出ない)

加齢により筋肉量が減少し、筋力が低下する状態を「サルコペニア」と呼びます。
特に、体を支える下半身や体幹の筋力が弱くなると、バランスを崩した時にグッと踏ん張る力が衰えてしまいます。

「おっと!」と思った瞬間に、危険を回避するための「とっさの一歩」がスムーズに出ない。
あるいは、体を支えきれずにそのまま倒れてしまう。
これが、高齢者の転倒事故が増える大きな原因の一つです。
研究によっては、サルコペニアの高齢者は転倒リスクが数倍に高まることも示されています。

参考: サルコペニアは高齢者の転倒リスクを最大10倍高める

ポイント3:視力・判断力の変化(危険の察知が遅れる)

加齢は、視覚にも様々な変化をもたらします。
動くものを捉える「動体視力」の低下や、一度に見渡せる範囲である「視野」が狭くなる傾向があります。
これにより、足元に置かれた道具や地面のわずかな段差に気づきにくくなります。

また、一つの作業に集中すると、他のことへの注意が散漫になりがちです。
例えば、枝を切ることに夢中になって、足元の踏みざんの位置を忘れて踏み外してしまう、といったケースです。
危険を察知する能力や、複数の情報から瞬時に状況を判断する能力が変化することで、事故を回避する反応が遅れてしまうのです。

安全なはしご・脚立の選び方【専門メーカーの視点】

ご自身の身体の変化を理解した上で、次に重要になるのが「道具選び」です。
ここでは、私たち専門メーカーが推奨する、高齢者の方に特に使っていただきたい、安全なはしご・脚立の選び方を2つのポイントに絞ってご紹介します。

選び方1:「安定性」で選ぶ(ワイドステップと補助器具)

転落事故の多くは、足を踏み外したり、バランスを崩したりすることで起こります。
これを防ぐために、まず注目してほしいのが「安定性」です。

ワイドステップ(幅広の踏みざん)

通常の脚立よりもステップの奥行きが広いタイプです。足元が安定し、安心して昇り降りができます。長時間の作業でも足の裏の負担が少なく、疲れにくいというメリットもあります。

アウトリガー(補助脚)

はしごの横方向への転倒を防ぐための補助的な脚です。地面との接地面積が広がることで、安定性が格段に向上します。特に、地面が完全に平らでない場所で作業する際に効果を発揮します。

伸縮脚タイプ

4本の脚の長さをそれぞれ調節できるタイプの脚立です。段差やスロープなど、傾斜のある場所でも水平を保って安全に設置できます。

選び方2:「使いやすさ」で選ぶ(軽さと手すりの有無)

安全な道具でも、重くて使いにくければ、結局出すのが億劫になり、無理な体勢で作業をしてしまう原因にもなりかねません。

軽量なアルミ製

現在主流のアルミ製のはしご・脚立は、軽量で持ち運びやすいのが特徴です。ご自身が無理なく持ち運べる重さのものを選びましょう。

上枠(手すり)付き

脚立の最上部に手すり(上枠)が付いているタイプは、昇り降りする際に体を支えることができ、安心感が全く違います。 高い場所での作業中に体を預けることで、安定した姿勢を保ちやすくなります。

これだけは守って!事故を防ぐための7つの鉄則

安全な道具を選んだら、次は「正しい使い方」の実践です。
当たり前と思うことでも、意外と見落としがちなポイントがあります。
使用前と使用中に分けて、絶対に守ってほしい7つの鉄則をご紹介します。

【使用前】3つのチェックポイント

作業を始める前に、必ず以下の3点を確認する習慣をつけましょう。

  1. 設置場所の確認:地面は平らか、滑らないか
    設置するのは、必ず硬く平らで滑りにくい地面です。砂利や土の上、濡れた場所や傾斜のある場所は絶対に避けてください。
  2. 本体の点検:ぐらつきや部品の破損はないか
    使用前に、脚立の開き止め金具がしっかりロックされているか、はしごの留め具に緩みはないか、部品の破損やぐらつきがないかを確認しましょう。
  3. 服装の確認:滑りにくい靴か、動きやすい服装か
    靴は、靴底に溝があり滑りにくいものを履きましょう。サンダルや革靴は危険です。服装は、裾や袖が引っかからない、体にフィットした動きやすいものを選びましょう。

【使用中】4つの絶対ルール

作業中は、以下の4つのルールを徹底してください。
なぜ危険なのか、その理由も合わせて理解することが大切です。

  1. 天板には絶対に乗らない・またがらない
    脚立の最上段である天板は、作業するためのステップではありません。 ここに乗ると重心が極端に高くなり、非常に不安定になります。少し体を動かしただけでバランスを崩し、転落する危険性が非常に高い行為です。
  2. 体を乗り出さない
    「あともう少し…」と、はしごや脚立から体を乗り出すのは大変危険です。 体の重心がはしごの外に移動すると、てこの原理で簡単に転倒してしまいます。面倒でも一度降りて、はしごをかけ直しましょう。
  3. はしごの上で無理な作業をしない
    はしごはあくまで昇り降りするための道具です。 はしごの上で壁を押したり引いたりするような、体に大きな力がかかる作業はバランスを崩す原因になるため避けましょう。作業が必要な場合は、より安定した脚立や足場台を使用してください。
  4. 二人以上で作業し、補助者が支える
    特に、はしごを使用する際は、必ずもう一人に補助者として足元を支えてもらうようにしましょう。 これだけで安定性が大きく向上し、万が一の時にも助けになります。

ご家族ができるサポートとは?

この記事を読んで、「実家の親が心配になった」という方もいらっしゃるかもしれません。
ご家族として、どのようなサポートができるでしょうか。

まずは危険性を一緒に確認する

頭ごなしに「危ないからやめろ!」と言うだけでは、なかなか聞いてもらえないかもしれません。
大切なのは、なぜ危険なのかを客観的な事実に基づいて一緒に理解することです。

本記事のようなデータや、加齢による身体の変化について、穏やかに話し合ってみましょう。「自分は大丈夫」という過信が、一番の危険につながることを共有することが第一歩です。

より安全な道具への買い替えを提案する

もし、ご実家で古かったり、不安定だったりするはしごや脚立を使い続けている場合は、新しい製品への買い替えを提案してみましょう。

前述した「安全なはしご・脚立の選び方」を参考に、「上枠(手すり)付き」や「ワイドステップ」の脚立を、誕生日や父の日、母の日などの機会にプレゼントするのも良い方法です。安全という贈り物は、何より喜ばれるはずです。

高所作業は無理せず専門業者に頼む選択肢も

庭木の剪定や雨どいの掃除、屋根の簡単な補修など、危険が伴う高所作業は、無理にご自身やご家族だけで行おうとせず、専門家に任せるのも賢明な選択です。
地域のシルバー人材センターや造園業者、リフォーム会社などに相談してみましょう。費用はかかりますが、安全には代えられません。

よくある質問(FAQ)

ここでは、高齢者のはしご・脚立使用に関してよく寄せられる質問にお答えします。

Q: 高齢者はもうはしごや脚立を使わない方がいいのでしょうか?

A: 一概に「使うべきではない」とは言えません。大切なのは、ご自身の身体能力の変化を理解し、それに合った安全な製品を選び、正しい使い方を徹底することです。この記事で紹介した選び方や使い方を守り、少しでも不安を感じる作業は無理せず専門家に頼むなど、賢く付き合っていくことが重要です。

Q: 脚立は何段までのものを選ぶのが安全ですか?

A: 作業したい高さからご自身の身長と腕の長さを引いた高さが目安になります。重要なのは、天板から数えて3段目以下で作業することです。 例えば、電球交換など天井付近の作業でも、天板に乗る必要がない高さの脚立を選びましょう。無理に一番上まで登らなくても作業できる、余裕のある高さの製品を選ぶのがポイントです。

Q: 古いはしごを使い続けても大丈夫ですか?

A: 見た目に問題がなくても、長年の使用で金属疲労が蓄積していたり、樹脂部品が紫外線などで劣化していたりする可能性があります。特に屋外に長期間置いていたものは注意が必要です。ぐらつきやきしみ、部品のサビなどが見られる場合は、安全のために新しい製品への買い替えを強くお勧めします。命を守る道具ですので、定期的な点検と適切なタイミングでの更新が不可欠です。

Q: はしごをかける時の適切な角度は何度ですか?

A: はしごを壁などに立てかけて使用する場合、最も安定する角度は「75度」とされています。 設置した際に、はしごの足元と壁との距離が、はしごの長さの約4分の1になるのが目安です。角度が急すぎると後ろに倒れやすく、緩やかすぎると足元が滑りやすくなるため、この「75度」を意識することが非常に重要です。

Q: 雨の日に屋外ではしごを使っても良いですか?

A: 絶対に避けるべきです。雨で地面がぬかるんでいると、はしごの脚が沈み込んだり滑ったりして非常に危険です。また、はしごの踏みざんや靴底も濡れて滑りやすくなります。強風の日も、風にあおられてバランスを崩す危険があるため、使用は控えてください。天候の良い、安定した条件下でのみ使用するようにしましょう。

特殊梯子製作所がご提案する、より安全なはしご

この記事では、高齢者の方が安全にはしごを使用するためのポイントを解説してきました。ご自身の身体の変化を理解し、それに合った道具を選ぶことの重要性を感じていただけたのではないでしょうか。

ここでは、解説した「安定性」や「使いやすさ」といったポイントを踏まえ、私たち特殊梯子製作所が自信を持っておすすめする、より安全性を高めた製品をご紹介します。

安定性を追求したフルセットモデル「スーパーラダーGシリーズ」

庭木の剪定など、屋外での作業で特に重要になるのが、はしごの安定性です。スーパーラダーGシリーズは、伸縮はしご「スーパーラダー」に、横方向への転倒を防ぐアウトリガー(補助脚)や、昇降時の支えとなる手掛棒などを標準装備したフルセット仕様です。

地面が完全に平らでない場所でも安定性を確保し、安心して作業に集中できます。ご自宅の庭作業が多い方に、特におすすめしたいモデルです。

「スーパーラダーGシリーズ」の詳細はこちら

室内での使いやすさと安心感「伸縮ロフトはしご」

「高い場所の電球を取り替えたい」「クローゼットの上段の荷物を下ろしたい」といった室内での作業には、軽量で持ち運びやすい「伸縮ロフトはしご」が最適です。

このはしごは、オプションで手すりを取り付けることができ、昇り降り時の安心感が格段に向上します。また、足元が安定するワイドステップへの変更も可能です。お客様のお部屋の高さに合わせてオーダーメイドで製作するため、無理な姿勢で作業する必要もありません。使わないときはコンパクトに収納できるのも嬉しいポイントです。

「伸縮ロフトはしご」の詳細はこちら

もしもの時に備える「QQラダー(避難はしご)」

日々の安全対策に加えて、火災や地震といった「もしも」の事態に備えることも非常に重要です。特に、2階以上の住宅にお住まいの場合、避難経路の確保は命を守る上で欠かせません。

「QQラダー」は、国家検定にも合格した信頼性の高い避難はしごです。独自の構造で「ゆれない・よれない・たわまない」抜群の安定性を実現しており、お子様からご年配の方まで安全に避難することができます。ご両親への「安全の贈り物」としても、大変喜ばれる製品です。

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まとめ

高齢者のはしご・脚立の使用は、ご自身の身体能力の変化を正しく理解し、「安全な製品選び」と「正しい使い方」を徹底すれば、決して過度に恐れる必要はありません。

大切なのは、「昔はできたから」という過信を捨て、今の自分に合った安全対策を講じることです。
この記事でご紹介したポイントを参考に、ご家庭のはしご・脚立の使い方を一度見直してみてください。

安全な道具と正しい知識は、皆さんの暮らしと命を守るための、何よりの「縁の下の力持ち」になってくれるはずです。
ご自宅のはしご・脚立の安全性に少しでも不安を感じたら、ぜひ一度、お近くのホームセンターなどで最新の安全な製品を手に取ってみてください。また、ご両親へのプレゼントとしても、安全機能付きの脚立は大変喜ばれます。

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このコラムの監修者

寺本 隆

寺本 隆( 業界歴:40年 )

長年、建築や造園業の現場で特殊なはしごを開発し続けてきた当社は、「どんな要望にも応えたい」という強い信念のもと、持ち運びやすく緊急時に展開できる伸縮はしごを実現しました。例えば鉄道での迅速な避難に貢献し、多くの官公庁や大手企業で採用されています。お客様からの多様な要望に応え、業界で類を見ない製品を生み出してきた私たちは、“考えることをやめなければ不可能はない”と信じ、今後も唯一無二のはしごを創り続けることを使命としています。

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