2025年12月9日

【首都直下地震シミュレーション】エレベーターが止まったタワマンからの避難、あなたならどうする?

こんにちは、特殊梯子製作所で技術ライターをしております。

突然ですが、もしも、あなたが住むタワーマンションで大地震が起き、エレベーターが止まってしまったら…。
考えただけで不安になりますよね?

実は、最近のエレベーターには、地震の揺れを感知して安全に停止する「地震時管制運転」という賢い機能が備わっているんです。
でも、その機能が作動したあと、一体どう行動すればいいのか、具体的にご存知でしょうか?

この記事では、産業用の特殊なはしごや安全機材の専門家である私の視点から、タワーマンションからの避難という「もしも」の状況を徹底的に解説していきます。

【この記事の結論】タワマン地震時の避難、4つの鉄則

  1. 鉄則1:基本は「在宅避難」
    建物の倒壊や火災の危険がなければ、慌てて避難所には向かわず自宅で待機するのが原則です。そのためには「水・食料・簡易トイレ」の備蓄が不可欠です。
  2. 鉄則2:避難は「階段」で慎重に
    エレベーターでの避難は絶対にNG。階段で避難する際は、将棋倒しを避けるため一斉に殺到しない「段階的避難」の考え方が重要です。
  3. 鉄則3:エレベーター停止は安全装置の証
    地震でエレベーターが止まるのは「地震時管制運転」という安全機能が正常に作動した証拠です。閉じ込められても慌てず、救助を待ちましょう。
  4. 鉄則4:最終手段は「避難ハッチ」
    階段が使えない場合の最後の砦が、ベランダにある避難ハッチです。事前に場所と使い方を確認しておくことが命を守ります。

【ポイント1】慌てないで!地震でエレベーターが止まるのは安全装置が作動した証拠

「地震でエレベーターに閉じ込められたらどうしよう…」多くの方がそんな不安をお持ちかもしれませんね。でも、ご安心ください。最近のエレベーターは、皆さんが思うよりもずっと賢いんです。

まずは知っておきたい「地震時管制運転」という仕組み

皆さんは、「地震時管制運転」という言葉を耳にしたことがありますか?
これは、2009年の建築基準法改正で設置が義務付けられた、エレベーターの安全装置のことです。地震の初期微動、つまりP波と呼ばれる小さな揺れを感知すると、エレベーターは自動的に最寄りの階に停止し、ドアを開けてくれる仕組みになっています。

つまり、地震の揺れでエレベーターが止まるのは、故障ではなく「乗っている人を安全に避難させるための機能が正常に作動した証拠」ということなんです。この仕組みのおかげで、私たちはパニックにならずに、落ち着いて行動する時間を得られるというわけです。

実際、首都直下地震では最大で約2万2000台のエレベーターで閉じ込めが発生するとの想定もあり、こうした安全装置の重要性はますます高まっています(日本経済新聞 2023年6月18日)。

停電しても大丈夫!バッテリーで最寄り階まで運んでくれる

「でも、地震で停電したら、結局閉じ込められてしまうんじゃないの?」
そう思われる方もいらっしゃるでしょう。その点も、最近の技術はしっかりとカバーしてくれています。

多くのエレベーターには、「停電時自動着床装置」という機能が備わっています。これは、万が一停電してしまっても、内蔵されたバッテリーの力でエレベーターを最寄り階まで動かし、ドアを開けてくれる優れものです。

この機能のおかげで、停電による閉じ込めリスクも大幅に低減されているんです。

なぜエレベーターでの避難は絶対ダメなのか?

ここまで聞くと、「じゃあ、安全装置が作動した後なら、エレベーターで避難してもいいの?」と思われるかもしれません。しかし、答えは断固として「NO」です。

安全装置が作動して最寄り階に到着した後、そのエレベーターが再び正常に動き出す保証はどこにもありません。大きな本震が来てさらに強い揺れに襲われたり、火災が発生して煙が昇降路に充満したり、あるいは復旧作業の状況が分からなかったりと、様々な二次災害のリスクが潜んでいます。

エレベーターでの避難は、自ら危険な状況に飛び込むようなもの。これは、ご自身とご家族の命を守るための絶対的なルールだと、安全機材の専門家として断言します。

【ポイント2】基本は「階段で避難」、でも知っておきたい「段階的避難」という考え方

エレベーターが使えないとなると、次に考えるのは「階段で避難する」ことですよね。しかし、ここにも一つ、大きな落とし穴があるんです。

なぜ一斉に避難してはいけないの?

タワーマンションのような大規模な集合住宅で、もし全員が一斉に非常階段に殺到したらどうなるでしょうか?

想像してみてください。小学校の運動会で行われる玉入れ競争。みんなが一斉にカゴを目がけて玉を投げ入れようと殺到したら、ぶつかったり転んだりして危ないですよね。それと同じで、非常階段という限られた空間に大勢の人が押し寄せると、将棋倒しなどの二次災害を引き起こす危険性が非常に高くなるんです。

特に、お年寄りや小さなお子さん、体の不自由な方がいる場合は、さらに危険な状況になりかねません。

「フェーズドエバキュエーション(段階的避難)」って何?

そこで重要になるのが、「フェーズドエバキュエーション」、つまり「段階的避難」という考え方です。
これは、火災が発生した階とその上下の階など、危険が差し迫っているエリアの住民を最優先で避難させ、それ以外の階の住民には、安全が確認されるまで自宅待機を指示するという、非常に合理的な避難方法です。

参考: 段階的避難の有効性 | 福島県原子力災害に備える情報サイト公式ホームページ

この段階的避難のルールは、皆さんがお住まいのマンションの「消防計画」に必ず盛り込まれているはずです。いざという時に慌てないためにも、一度、ご自身のマンションの消防計画がどうなっているのか、管理組合や管理会社に確認しておくことを強くお勧めします。

避難するときの服装と持ち物、ここがポイントです

さあ、いよいよ階段で避難するとなった時、どんな準備が必要でしょうか。
現場のプロは「安全は装備から」とよく言いますが、避難も全く同じなんです。最低限、以下のものは準備しておきましょう。

  • ヘルメットや防災頭巾:落下物から頭を守るために必須です。
  • 長袖・長ズボン:ガラスの破片などによる怪我を防ぎます。
  • 底の厚い靴:釘やガラスを踏んでも怪我をしないように、普段履き慣れた運動靴などが最適です。
  • 軍手や革手袋:瓦礫をどかしたり、手すりを持ったりする際に手を守ります。
  • 非常用持ち出し袋:両手が自由に使えるように、リュックサックタイプがおすすめです。中身は後ほど詳しく解説しますね。

こうした服装と装備を事前に準備しておくことが、安全な避難への第一歩となるのです。

【ポイント3】最後の砦!「避難ハッチ・避難はしご」の正しい使い方、ご存知ですか?

火災などで煙が充満し、階段での避難すら危険な状況になった場合、どうすればいいのでしょうか。そんな時のまさに「最後の砦」となるのが、バルコニーに設置されている「避難ハッチ」です。

私の専門分野である特殊梯子の知識を活かして、この命綱の正しい使い方を詳しく解説しますね。

あなたの家のバルコニーにも?まずは設置場所の確認から

「うちのマンションにもそんなものあったかな?」と思われた方、いらっしゃるかもしれません。灯台下暗し、と言いますが、案外、毎日目にしているのに意識していないことが多いんです。いざという時の命綱が、実は皆さんの足元にあるかもしれませんよ。

まずは、ご自宅のバルコニーの床を見てみてください。四角い金属製の蓋があれば、それが避難ハッチです。この機会に、どこに設置されているのかをしっかりと確認しておきましょう。

【図解提案】プロが教える!安全な避難ハッチの操作手順

では、実際に避難ハッチを使う際の手順を、ステップバイステップで見ていきましょう。

安全な避難ハッチの操作手順

ステップ1:蓋のロックを解除する

まず、蓋を少し持ち上げてみてください。おそらく5cmほどで一度止まるはずです。これは、子供が誤って開けてしまわないための安全ロック(チャイルドロック)がかかっているためです。

蓋の表面に黄色い三角のシールなどでロックの位置が示されていることが多いので、そのあたりを探り、フックやチェーンを外してロックを解除します。慌てず、ゆっくり操作するのがコツですよ。

ステップ2:はしごを降ろす

ロックを外したら、蓋を完全に開けます。すると、折りたたまれたはしごが見えるはずです。はしごはストッパーで固定されているので、それを押して(足で踏んでも構いません)下の階にはしごを降ろします。

ここがポイントです! はしごを降ろす前には、必ず下の階に人がいないか、障害物がないかを確認してください。声をかけて注意を促すことが、二次災害を防ぐ上で非常に重要です。

ステップ3:安全に降りる

いよいよはしごを降ります。ここでもプロの視点から重要なアドバイスがあります。

それは「3点支持」を徹底することです。3点支持とは、両手両足のうち、常に3点で体を支えるということ。つまり、片手か片足を動かす時は、残りの3点で体をしっかり支える、というわけです。

また、はしごの横の縦棒ではなく、足をかけるステップ部分をしっかりと握るようにしてください。リュックなどを背負っていると、はしごに引っかかる可能性があり大変危険です。荷物は先に下に降ろすか、信頼できる人に渡しておきましょう。

そして、一人ずつ、焦らず、ゆっくりと降りてください。

ここが重要!使用前に絶対に確認すべき注意点

この避難ハッチ、いざという時に確実に機能させるためには、日頃の心がけが欠かせません。なお、こうした避難器具の設置や維持に関しては、消防庁が定める技術上の基準で詳細が規定されています。

ハッチの上に物を置かない

植木鉢や物置などを置いていると、いざという時に蓋が開けられません。絶対にやめましょう。

定期的な点検

錆びて開かない、はしごがスムーズに降りない、といったことがないように、管理組合主体で定期的な点検が行われているはずです。もしご自身の目で見て不安な点があれば、すぐに管理組合に報告してください。

子供への注意喚起

お子さんがいるご家庭では、これが遊び道具ではないことをしっかりと教え、いたずらで開けたりしないように言い聞かせておくことも大切です。

どんなに優れた道具も、正しい知識と日頃のメンテナンスがなければ、まさに「宝の持ち腐れ」です。命を守る設備だということを、常に意識しておきたいですね。

「もしも」の備えを万全に。自分専用の避難はしごという選択肢

ここまで、バルコニーに備え付けられた避難ハッチの使い方を解説してきました。これは、あなたの命を守るための非常に重要な設備です。

しかし、ここで専門家として、もう一歩踏み込んだ「もしも」を考えていただきたいと思います。

  • もし、避難ハッチの上に、他の住民の荷物が置かれていて使えなかったら?
  • もし、火や煙で、避難ハッチのあるバルコニーへの経路が絶たれてしまったら?

共同住宅である以上、こうしたリスクはゼロではありません。そんな「万が一の事態」に備え、自分自身でコントロールできる避難経路を確保しておくこと。それこそが、防災における「自助」の考え方です。

そこで私たちがご提案したいのが、個人で備えておける緊急避難用はしご、QQラダーです。

QQラダー

このQQラダーは、コンパクトに収納でき、女性やご高齢の方でも簡単に窓やバルコニーの手すりに設置して、素早く展開できるのが特徴です。備え付けの避難ハッチが使えない場合の「第二の命綱」として、ご自宅に備えておくことで、避難の選択肢が格段に広がります。

「備えあれば憂いなし」と言いますが、防災においては「備えすぎ」ということは決してありません。公的な設備を信頼しつつ、自分自身でできる備えをプラスすることで、あなたとご家族の安全は、より確かなものになるのです。

【ポイント4】実は「在宅避難」が基本!タワマン住民が今すぐすべき備えとは

さて、ここまで避難方法について解説してきましたが、実はタワーマンションにおける防災の基本は、可能な限り「在宅避難」、つまり自宅で安全を確保しながら生活を続けることなんです。これには、都市部ならではの切実な理由があります。

なぜ避難所に行けないの?タワマン住民の現実

大規模な災害が発生した際、多くの人が避難所に身を寄せます。しかし、東京都などが公表している被害想定によれば、タワーマンションの住民が避難所に殺到した場合、その収容能力をはるかに超えてしまうことが指摘されています。実際、東日本大震災の際には、避難所を訪れても受け入れを断られてしまったケースも報告されているのです。

つまり、建物の倒壊や火災の延焼といった直接的な危険が差し迫っていない限り、私たちは自宅を「安全な避難場所」として活用する必要がある、というわけです。

最低3日、できれば1週間!命をつなぐ備蓄リスト

在宅避難を成功させるための鍵は、なんといっても「備蓄」です。ライフラインが復旧するまでの間、自力で生活を維持するための準備が欠かせません。

特に以下のものは、最低でも3日分、できれば1週間分を目安に備えておきましょう。

種類具体例ポイント
飲料水(1人1日3リットルが目安)生活用水(トイレ用など)も別途確保できると安心です。
食料ご飯(アルファ米など)、缶詰、レトルト食品、お菓子カセットコンロとボンベも忘れずに。
簡易トイレ携帯トイレ、凝固剤、消臭袋これが最も重要です! トイレ問題は非常に深刻になります。1人1日5回分を目安に準備しましょう。
衛生用品ウェットティッシュ、トイレットペーパー、常備薬、生理用品断水時には特に重宝します。
情報収集携帯ラジオ(手回し充電式が便利)、モバイルバッテリー正確な情報を得ることが、次の行動につながります。

あなたの家は大丈夫?長周期地震動と家具の転倒防止策

タワーマンションに住む上で、もう一つ知っておかなければならないのが「長周期地震動」です。これは、大きな地震の際に発生する、ゆっくりとした大きな揺れのこと。この揺れは、高層階になるほど増幅される特性があり、船の上にいるような感覚で、数分間にわたって揺れ続けることもあります。

この長周期地震動の恐ろしい点は、家具が「転倒」するだけでなく、大きく「移動」したり、中の物が「落下」したりすることです。たとえ建物の構造が頑丈で安全でも、室内の家具が凶器と化してしまっては意味がありませんよね。

今すぐ、ご自宅の家具の配置を見直してみてください。L字金具や突っ張り棒で壁に固定する、重いものは下に置く、寝室には背の高い家具を置かないなど、基本的な対策を徹底することが、室内での安全を確保する上で非常に重要です。

よくある質問(FAQ)

Q: 私の住んでいるマンションは耐震?免震?どうすればわかりますか?

A: それはとても重要な視点ですね。ご自身のマンションがどの構造になっているかを知るには、管理組合や管理会社に問い合わせるのが最も確実です。また、マンション購入時の重要事項説明書やパンフレットにも記載されていることが多いですよ。

一般的に、免震構造は揺れ自体を建物に伝えにくくするため、上層階でも家具の転倒などのリスクが低いとされています。東日本大震災では、この構造の違いで室内の被害に大きな差が出たというデータもあるんです。

Q: 避難ハッチが錆びていて開くか心配です。

A: それは非常に危険なサインです。すぐに管理組合に報告し、専門業者による点検・交換を依頼してください。避難ハッチは、いざという時に確実に機能しなければ意味がありません。命を守る大切な設備ですから、定期的なメンテナンスが不可欠です。もし不安な点があれば、放置せずに声を上げることが大切ですよ。

Q: 高層階なのですが、ペットと一緒に避難できますか?

A: ペットも大切な家族の一員ですから、心配になりますよね。マンションの規約にもよりますが、最近ではペットとの「同行避難」が推奨されるケースが増えています。ただし、避難所での受け入れ体制は自治体によって様々です。事前に、お住まいのマンションのルールと、自治体のペット同行避難に関するガイドラインを確認しておくことをお勧めします。

Q: 停電したら、部屋の鍵(オートロック)は開けられますか?

A: 最近のスマートロックやオートロックは、停電時でも作動するバッテリーを備えているか、非常用の物理的な鍵が付属している場合がほとんどです。しかし、製品によって仕様は異なります。万が一の事態に備え、ご自身の家の鍵が停電時にどうなるのか、この機会に取扱説明書などで確認しておくことが大切です。

Q: 避難するとき、ブレーカーは落とすべきですか?

A: はい、家を離れて避難する際は、必ず分電盤のブレーカーを落としてください。これは、停電が復旧した際に、倒れた家電製品などから火災が発生する「通電火災」を防ぐための非常に重要な行動です。避難時の鉄則として覚えておきましょう。

まとめ

いかがでしたか?
エレベーターが止まったタワーマンションからの避難は、決してパニックになる必要はありません。
「地震時管制運転」や「段階的避難」といった仕組みを正しく理解し、避難ハッチのような「最後の砦」の使い方を知っておくこと。そして、何よりも「在宅避難」を基本とした日頃の備えをしっかりとしておくこと。

この記事をきっかけに、まずはご自宅の避難経路と避難ハッチの場所を確認し、ご家族と防災について話し合ってみてください。
その小さな一歩が、あなたと大切な人の未来を守る大きな力になります。

安全機材の専門家として、皆さんの備えを心から応援しています。

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このコラムの監修者

寺本 隆

寺本 隆( 業界歴:40年 )

長年、建築や造園業の現場で特殊なはしごを開発し続けてきた当社は、「どんな要望にも応えたい」という強い信念のもと、持ち運びやすく緊急時に展開できる伸縮はしごを実現しました。例えば鉄道での迅速な避難に貢献し、多くの官公庁や大手企業で採用されています。お客様からの多様な要望に応え、業界で類を見ない製品を生み出してきた私たちは、“考えることをやめなければ不可能はない”と信じ、今後も唯一無二のはしごを創り続けることを使命としています。

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